三重大学みえの未来図共創機構 産学官連携推進部門

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2020.12.22

『次期科学技術・イノベーション基本計画の共創に向けた全国キャラバン』三重大学開催『三重の未来図共創の場』を実施しました

11月16日(月)、本学と内閣府の共催により『次期科学技術・イノベーション基本計画の共創に向けた全国キャラバン』三重大学開催『三重の未来図共創の場』を実施しました。

現在、内閣府では来年度からの5年間を対象とした次期科学技術・イノベーション基本計画を策定中ですが、この計画の実効性を高めるため、様々な現場の多様なステークホルダーの声を聴く機会として全国キャラバンが展開されており、三重大学はその一つの会場として声が掛かりました。そのため、日頃、三重の地方創生に取り組む関係者の方々にご参加いただき、組織的、恒常的な産官学連携を深めることが、持続的な三重県の発展や新たな価値の創造、さらには日本、世界の発展に貢献するには必要不可欠であると考え、その足場固めとして企画し、オンラインとオフラインのハイブリッド型座談会(3部型式)を実施しました。

座談会の冒頭、駒田学長より「三重県という地域は、産学官民の連携・協力が極めてうまく行っている地域であり、産学官連携を創発的に取り組む環境が醸成されている。一層の成果向上に向けて、本日は今一度、様々な立場の方のお考えを聞き、相互理解をよりいっそう深めるとともに、魅力あふれる三重県の未来図を共に描ければ素晴らしいのではないか。特にポストコロナに予想されるルネサンスの到来に備え、立場の異なる方々からご意見を拝聴することはとても大切である。本日の企画が日本、地域における未来社会の在り方や次期科学技術・イノベーション基本計画の展開の方向性を共有し、明確化するための一助となることを願っている。」と挨拶がありました。

第1部では、内閣府総合科学技術・イノベーション会議 上山 隆大 常勤議員より、ポストコロナ時代における「科学技術・イノベーション基本計画」について講演がありました。上山議員からは「2年ほど前から、2030年あるいは2050年の時点では日本がどうなっているのか、そこからのバックキャストで2021年からの5年間の計画を語り始めた。そこにCOVID-19のパンデミックが起こり、計画を練り直している。デジタル化の遅れといった課題が表出し、デジタルトランスフォーメーションの推進や、Society5.0の描いた理念の実現に向けて社会構造の変革などが必要である。そこには科学技術への投資拡大、理系や文系といった枠組みでない人材育成によって社会を再構築していく必要がある。」といったコメントなど、我が国の戦略・方向性となる「Japan Model」の考え方等に触れながら、基本計画案の概要が紹介されました。

第2部では、「地方国立大学が仕掛ける地域イノベーション」と題し、地域イノベーション学研究科長・教授 三宅 秀人より「深紫外LEDで創生される産業連鎖プロジェクト」について、副学長(社会連携担当)・地域イノベーション学研究科教授 西村 訓弘より「三重モデルの地域イノベーションを起こす仕組みと人づくり」について、宇都宮大学学長特別補佐、農学部副学部長・教授 吉澤 史昭氏より「宇都宮大学による地域創生推進モデルのデザイン構想」について、それぞれ事例紹介がありました。

第3部では、「日本と世界の発展に寄与する『三重の未来図』は描けるか。」と題し、10名の方々によるパネルディスカッションが行われました。

〈産業界〉
株式会社浅井農園代表取締役 浅井 雄一郎氏
ジャパンマテリアル株式会社代表取締役社長 田中 久男氏
株式会社三重銀行代表取締役会長 種橋 潤治氏
(三重県商工会議所連合会会長、四日市商工会議所会頭)
〈行政〉
三重県知事 鈴木 英敬氏
〈内閣府〉
内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員 上山 隆大氏
〈大学〉
宇都宮大学 学長特別補佐、農学部副学部長・教授 吉澤 史昭氏
三重大学 学長 駒田 美弘
三重大学 理事(研究・社会連携担当)  緒方 正人
三重大学 副学長(社会連携担当)・地域イノベーション学研究科教授 西村 訓弘
三重大学 地域イノベーション学研究科長・教授 三宅 秀人

各参加者からは、次期基本計画に対する見解や産業界の現状などについてコメントがあり、駒田学長からは、「SDGsの基本的な考えは非常に大事だが、その実現は容易ではないと思われる。だれ一人取り残さないというコンセプトの下、是非、人を豊かにする、幸せにする基本計画を作っていただきたい。また大学の魅力や在り方として、ある意味で社会と離れ、真理の探究に打ち込むといった魅力を持つ大学がある。その一方で社会の要請に敏感に対応して人材育成や研究開発に取り組む大学も必要である。簡単には成立しないが、その両輪で行けるような大学、あるいは新しい学部の設置といった面での地域貢献の形もあると思う。今後は企業が大学教育を一緒にやっていく、そういう新しい大学のコンセプトも必要であり、そんな魅力ある大学創りを三重大学で取り組ませていただきたい。」といったコメントがありました。
続いて緒方理事からは、「イノベーションは小さなところから群発していくものなので、うまい掛け算をすれば、小さな領域で世界のトップになれるものが生み出される可能性がある。ただ、それが日本を支える産業に育つかは、ある意味やってみないと分からないが、小さな群発のイノベーションをこれから作っていく必要はある。三重大学は行政とも連携して様々なことに取り組んでいる。これからの地方国立大学は、他府県、あるいは日本全国、場合によっては世界を対象とするハブとなり、研究に限らず産業を含め、他の地域、他の分野のものと三重県を繋ぐ役割を担う必要がある。」とのコメントがありました。

種橋会長からは、「三重県の人は気づいていないかもしれない三重県の魅力・良さがある。三重大学にはこの地域でさらなる高等教育の充実を図り、三重県地域の企業や産業が期待する人材供給を図ってほしい。今回のコロナ禍を機に、リモートの可能性や東京一極集中の課題が浮き彫りになった。この機に三重県の存在価値を高める。若者を三重県に呼び込む。みえ産業振興ビジョンの4つの取り組み方向の実現を、スピード感をもってみんなで取り組まないといけない。三重大学は地域特性に応じた対応を目指す4つのサテライトを作った。これからも綿密な産学官連携を通じて、三重県の多様性を生かす取り組みをお願いしたい。」とのコメントがありました。

浅井社長からは、「社会は創るものではなく、結果としてなるもの、なったものだと考えている。いかに本気の大人がいるか。子どもたちがワクワクしてくれるような、それをつくっていくのは大人たちの責任。自分はそういう大人になりたいと思うが、自社にどれだけ本気の大人がいるか。三重大学にもどれだけ本気の大人がいるか、それが学生さんにも影響を与え、未来の社会が作られていることになると思う。」とのコメントがありました。

田中社長からは、「大学の人材育成に関して、残念ながらベトナムの大学の卒業生と日本の大学の卒業生と比較すると、仕事への取り組み姿勢や意識の違いを感じる。三重県の恵まれた環境で育まれた県民性が、そのまま三重大学にも当てはまる気がしている。欠点がなく、大体75点が取れるが30点や150点というのがない。そこが魅力であり、魅力でないところだと感じている。三重県で産学連携を通じて人づくりを取り組んでいきたいと思っている。大学の研究機能に関して、日本、韓国、中国、台湾の半導体の原点を作ったのは東北大学という事実がある。一つの研究室に企業のエンジニアを集めて徹底した半導体の研究を行った。今の世界の半導体の原点を作ったのは、大学の研究室という事実がある中で、三重大学はどう感じられるか。」とのコメントがありました。

吉澤先生からは、「栃木県はイノベーションを育てる土壌整備が十分とは言えない。そこを改善するために西村先生のお力をお借りするが、三重県の成功事例のノウハウをそのまま持ち込んでも栃木県での成功には繋がらない。今は地域にいる人間が、地域特性の活かし方を見抜く力を身に付けるとき。栃木県での成功モデルを考え、そこに命を吹き込むのに三重県で成功したノウハウが必ず役に立つはずなので、力を借りて助けてもらう。栃木県の地域の特性に合った戦略、三重とは違うやり方で、全国や世界を相手に戦っていきたい。」とのコメントがありました。

鈴木知事からは「三重県には、将来価値を生み出す資源やポテンシャルがあり、それら多様性のある異なる主体を、新たな視点で組み合わせる「KUMINAOSHI」のコンセプトがある。課題や多様性があるからイノベーションが起こるが、そこには人材がいないと起こらない。地方の視点として、地方に人材が確保される仕組みを今後の基本計画に入れて欲しい。今後、三重県でもその仕組みを三重大学等と一緒に展開できればよい。」とのコメントがありました。

上山議員からは、「研究力の低下はシリアスな問題。研究と社会連携の2軸を追うことは、研究者だけではなく地方も国も同様に必要。日本は快適過ぎて変われないが、一方でそろそろ限界に来ている。起爆剤は人しかない。人と地域や自治体や政府との関わり方を根本的に変えていくしかない。学び合いのようなものが決定的に重要。地方国立大学には地方のハブとしての新たなミッションがある。再来年度から国立大学は第4期が始まる。それがゲームチェンジとなる。その中で人づくりについて何をやるべきか考えないといけない。地方に役立つ新たな人材を確保する仕組みは地方からの声をすくい上げるしかない。」とのコメントがありました。

また、第3部の総括として、上山議員から「皆さんの熱い想いが見える大変ありがたい機会をいただいた。本日現場の声を聞いて、人の問題が喫緊の課題という印象を受けた。第6期の基本計画では、大学の再生だけでなく、人を中心にして初等中等教育を含めて人にどれくらい投資をしていくのかを計画の中で表現していきたい。」と謝辞が述べられました。

今回の座談会の最後として、緒方理事から「日本の将来がどうなるのか、未来が描きにくいという実感を我々も持ちつつある。その中で、大学は教育と研究を一つの場所でやるという非常に大きな特徴を持っており、そこに可能性も課題もある。日本の大学で例えば基礎研究に取り組む研究者の多くは、海外の研究者と比較しても遜色のない、小さなことでも世界一という志を持っている。その研究者たちの力を発揮するために、大学も努力を重ねるが、次期の基本計画によってそういった研究者の力が発揮され、日本の将来の発展に繋がることを期待している。」と挨拶がありました。

約2時間に及んだ座談会は、三重の地方創生を担う関係者が、次期基本計画へ現場の想いや声を届ける場として、また「三重の未来図」をデッサンする場として、熱気を帯びながら幕を閉じました。